For Japanese Talents

TT2020 修了生レポート 1

Talents Tokyo(TT)は、東京都などが主催する映画の人材育成プロジェクトで、2010年に始まりました。今年のTTはどのように開催されるのか。修了生による体験談レポート1を掲載しています。

今井太郎

大阪で映画プロデューサーをしている今井太郎です。タレンツ・トーキョー(以下TT)の過去の修了生として、今回コラムを書かせて頂く事になりました。

今年もTTの季節がやってきましたが、皆さんご察知の通り、今年は例年とは違います。TTは東京フィルメックス期間中に開催されるアジアの監督やプロデューサー向けワークショップなのですが、今年はオンラインで開催される事になりました。そして例年11月下旬に開催されていたのですが、今年は東京フィルメックスが東京国際映画祭と並行して開催される事になり、TTも11月頭に実施される事になりました。東京国際映画祭との共催については来年以降、実際にタレンツ(参加者)が来日する場合にどういう取組ができるのか楽しみです。

オンライン開催はTTにとっては初の試みとなりますが、私は9月にSEAFIC x PASというタイ/フランス共催のワークショップにオンラインで参加しました。ZoomやGoogle Meetを使って実施されるわけですが、実地よりもオンラインの方が、より効率的で分かりやすい印象がありました。しかしながら、こういったワークショップの醍醐味は参加者同士の出会いであり、休憩時間に雑談したり、夜は一緒に食事したりして交流を深める事です。こういった違う国、言語、文化、宗教、価値観のフィルムメーカー達が交流を深めるという重要なポイントがオンラインでは弱いと感じました。

そこを何とかしようと、今回のTTのチームは頑張っています。例えばトレーニング・セッションと称して、会期前に何度かZoomでタレンツが集まり、コミュニケーションを取る場を設けています。また、会期中にはオンラインでのパーティーを企画しており、いかに実際に会った時のように交流を深められるか色々と考えています。

私はプロデューサーとしての実績はまだまだなのですが、Ties That Bind、Busan Asian Film School、TT、Rotterdam Lab、Asia Pacific Screen Lab、SEAFICというワークショップにはたくさん参加してきました。全てのプログラムで多くの事を学ばせていただき、多くの素晴らしい出会いがありましたが、TTの特徴を一言で言うと、タレンツとエキスパーツのレベルが非常に高いという事でしょうか。TT含めこれらのワークショップは基本的に若手監督、プロデューサー向けなのですが、TTには例えば今年はインドネシアのYulia Evina Bharaという近年大活躍しているプロデューサーがタレンツとして参加しています。エキスパーツはもちろんアジアのメンターとも言える市山尚三さんの存在が大きいのですが、今年は黒沢清監督のマスタークラスが実施されます。そういったハイレベルな1週間のプログラムの中で、お互い刺激しあい、結果としてTT修了生がベルリン、カンヌ、ベネチアといった世界の主要映画祭で活躍しているのだと実感します。

TTは日本人の監督やプロデューサーも、実績があってもなくてもチャレンジする価値のある素晴らしいプログラムです。しかし世界から注目されるTTの実際の魅力は何なのか?ぜひ皆さんにも11月5日のオープン・デーに参加して頂き体感して頂きたいですし、私も今年のプログラムを覗き見して探ってみたいと思います。

IMAI Taro (Producer, 2018 Alumnus)
今井太郎(プロデューサー、2018年修了) 

高校卒業後渡米し、Los Angeles City Collegeで映画製作を専攻。帰国後、10年間一般企業にて勤めた後、大阪でharakiri filmsを立ち上げる。2016年にプロデュースした藤村明世監督の『見栄を張る』は国内外7カ国の映画祭で上映され、国内とタイで劇場公開された。その実績が評価され、Ties That Bind、Busan Asian Film School、Talents Tokyo、Rotterdam Lab、Asia Pacific Screen Lab、SEAFIC等、海外の若手プロデューサー向け国際共同製作ワークショップにも多数参加。最近は国内のみにとどまらず、海外の若手監督らともオリジナル作品の企画開発に注力している。

木下雄介

タレンツ・トーキョー(以下TT)のレクチャーの初めにエキスパーツの一人、Berlinale Talentsから来たフロリアン・ウェグホルンに“Tell me what YOU know best?”と問われました。初めて参加したワークショップにも関わらず、なぜか私の映画企画は必ず海外の映画人に認められ、すぐ作れるようになるという確信に溢れていた私でしたが、まず自分自身を見つめ直すことから始まりました。

また私が映画を志した頃より敬愛する監督であり、エキスパーツのモフセン・マフマルバフには、なぜ今あなたの物語が今の世界に必要か、自分と世界の共通のゴールを映画の中で掲げることの大切さを学びました。私の準備してきた映画企画からごく短時間でそれを掬いあげて形を与える作業は修行のようでしたが、これまで彼の作品の中に描かれていたので、信じることができました。

互いを全く知らないところから始まる個性的なアジアのタレンツ(参加者)との世界のライブな情報が行き交う同居生活と、監督、プロデューサー、ワールドセールスとそれぞれのプロフェッショナルなエキスパーツの視点からの示唆があるレクチャーに、日々私の映画は更新されて行きました。人と向き合うことで、また自分が作られていくことを実感しました。

今年のTTのテーマは“Reconnecting Together”。ただ今私は、仕事や映画の企画がままならない中、幾分元通りになってきたように見えてしまう世界に追いつこうと取り繕いつつも、自分を見失いがちになっているかもしれません。リアルにオンラインに開催される映画祭で、また私は人に会いに行きます。

5日には今年のタレンツたちによるオープン・プレゼンテーションがあります。TTのH Pで登録すればどこからでもオンライン視聴が可能なのでぜひ覗きにきてください。

KINOSHITA Yusuke (Director, 2016 Alumnus)
木下雄介(監督、2016年修了)

1981年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。監督・脚本・撮影・編集した自主映画『鳥籠』(02)がぴあフィルムフェスティバルにて準グランプリと観客賞を受賞。第15回PFFスカラシップとなる初長編映画『水の花』(06)がベルリン国際映画祭に出品される。その後短編映画『NOTHING UNUSUAL』(12)を発表。
最新作は是枝裕和総合監修のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』(18)の一編『いたずら同盟』。香港で製作された『十年』(15)を元に、日本・タイ・台湾の映像作家がそれぞれの国の10年後を描いた国際共同プロジェクトに参加。日本版の『十年Ten Years Japan』は釜山国際映画祭に出品され国内外で劇場公開された。