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ドイツ大統領がタレンツ・トーキョーを視察。小池知事が歓迎。

2022.11

訪日中のドイツ連邦共和国シュタインマイヤー大統領は、11月2日、東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、タレンツ・トーキョー実行委員会主催により、10月31日からゲーテ・インスティトゥート東京で行われている「タレンツ・トーキョー2022」を視察し、修了生や今年の参加者15名と交流しました。

冒頭、小池百合子東京都知事は、
「大統領に、アジアの各都市から参加しているタレンツの、映画に向けた熱意に触れていただく、またとない機会です。今回の参加者が手がけた作品を、大統領にお目にかける日がくることを望んでいます」
と大統領歓迎の挨拶をされました。

大統領の訪日を記念して行われた、ドイツと日本の映画・映像の交流に関するこの特別イベントには、タレンツ・トーキョーの修了生の「PLAN75」でカンヌ映画祭カメラドール賞特別表彰を受けた早川千絵監督(2014年修了)、水野詠子プロデューサー(2019年修了)、「ある男」が公開を控える石川慶監督(2011年修了)、シンガポールのアンソニー・チェン監督(2010年修了)が出席してラウンドテーブルが行われました。

・早川千絵監督
「PLAN75」は、日本の高齢化社会の問題がテーマとなっていて、政府の進める「75歳で自ら死を選択できる」という世の中が描かれています。深刻な社会問題がテーマですが、様々なヒューマンドラマな人間模様も描かれています。ただ、ストーリーの内容的にとても繊細かつ難しいテーマで、私にとっては初の長編映画であること、さらにオリジナルストーリー作品だったので出資者を見つけるのが非常に大変でした。
タレンツ・トーキョーには2014年に参加しました。それ以来タレンツ・トーキョーには本当に様々なサポートをして頂き、さらにはいろいろなコネクションができたので非常に感謝しています。「PLAN75」も初期段階から協力して頂きました。

・水野詠子プロデューサー
日本で出資者を見つけるのは本当に大変でした。最初に「PLAN75」のプロジェクトをスタートさせた時に日本ではなく海外のプロデューサーから素晴らしい評価を得ました。そして、高齢化問題は日本だけでなく、世界中で共通の問題なのだと認識しました。フランス、フィリピン、カタールから支援を受け、海外の評価が出てから日本での出資者が見つかりました。

タレンツ・トーキョーには本当に感謝をしていて、2019年の参加時にスペシャル・メンションと、修了後に渡航助成金を受賞した事がとても励みになりました。さらにはいろんな偶然が重なり、同じくTT修了生である、アレンバーグ・アン(TT2014)とコ・プロデュースを行いました。

・石川慶監督
出資の話でいうと、私の作品「ある男」は松竹という大きい映画会社の製作なので、早川さんとは状況が少し違いますが、日本で出資者を見つけるのは本当に大変です。とくに社会問題等をテーマとした深刻な内容はより難しいです。なので、「ある男」はヨーロッパをはじめ、海外でも上映されたのは私にとっても新しいチャレンジでした。この映画はマッチファクトリーというドイツのセールスエージェントが世界販売を手がけています。以前は、あまり日本映画を扱っていませんでしたが、「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)を皮切りに日本との接点ができたように思います。

・アンソニー・チェン監督
タレンツ・トーキョーにはとても感謝しています。12年前の2010年のタレンツ・トーキョー(当時の名称はNext Masters Tokyo)に参加できた事が転機となりました。同期の参加者のシャーロットさんは「イロイロ ぬくもりの記憶」で助監督を務めてくれました。現在も12年前に東京で出会ったコネクションは生きています。今こうやって12年後に講師として参加できて非常にうれしいです。

ラウンドテーブルに先立ち、大統領に随行して来日中のベルリン映画祭前ディレクターで、ベルリナーレ・タレンツ(タレンツ・トーキョーは、このベルリンのアジア版として実施)の創設者でもあるディーター・コスリック氏が、ベルリンと世界に広がる国際版の意義について説明した。

「国際的に映画を製作し、さらに大きな成功を収めているタレンツ・トーキョーの卒業生と今日またこうやって一緒に集まれた事をとてもうれしく思います。ベルリナーレ・タレンツは、若いフィルムメイカーにとって巨匠との出会いという初めての体験を促す場所として2003年に創設しました。今ではタレンツ・プログラムの1万人に近い修了生を輩出するなど、参加者同士のネットワーキングが世界中で次々と生まれています。」

撮影:明田川志保、白畑留美